剣道の稽古においては体力や技の鍛錬だけでなく、理論を学ぶことも大切です。
四段以降は「指導者」の位であると言われますから、自分の中で理解するだけでなくそれを教えることができるように技能や理論を身に付け、より厚みのある剣道を目指しましょう!
指導者の重要性
どんなスポーツ・競技においても指導者が重要な役割を果たすのは同じですが、"人間形成"に主眼を置いている剣道においてこれは特に顕著だと言えます。
技術の指導のみが重要であるならば指導者に求められるのは指導者自身の技術とそれを伝える力くらいですが、人間形成となると優れた人格や人間性を高めるような指導が求められます。
さらに剣道では指導者と指導される側が同じ場で稽古することから、指導者の人柄や剣捌きがダイレクトに伝わります。
そう考えると指導者にこそ謙虚さや向上意欲が必要だとも言えます。
指導者に求められること
心構えをするためにはまず「何を求められているのか」を知ることが必要です。
以下、指導を受ける人の年齢や錬度によって違いのある「指導者に求められること」の一例を確認しましょう。
初心者・小学生
剣道を始めたばかりの人や小学生のような子供には、まず「剣道を好きになってもらう」ことが求められます。
何かしらのきっかけをもって剣道を学んでいるわけですが、「面白い」と感じて続けてくれなければ何を伝えることもできません。
親しく話しかけたり剣道以外の話題も取り上げたりして緊張をほぐし、一度の指導における到達目標を小刻みにして達成したり変化が見られた時にはきちんと褒めて成功体験をさせましょう。
また、稽古にはゲーム性を取り入れ、上達へのモチベーションを上げさせるように努めましょう。
その一方で、挨拶や所作、道具の扱い方や掃除などについては真面目な雰囲気の中で指導し、不十分な場面があればきちんと叱ることも必要です。
中学生・高校生
剣道人口のボリュームゾーンだと思われるこの世代ですが、人数が多くとも個々人に合わせた指導が求められます。
一人ひとり得意・不得意があるわけですが、得意なことを伸ばし、不得意なことを克服できるようなアドバイスをするようにしましょう。
また、特に中学生などは成長に伴って精神的に不安定であることがありますから、人格や個性をきちんと認め、それを伝えた上で論理的に指導をするようにしましょう。
さらに、やはり剣道を続けてもらうために稽古以外でもコミュニケーションをとり、剣道の奥深さや続けることの意義を伝えるようにしましょう。
大学生・一般
高校卒業後も剣道を続けている人は多くの場合自分の剣風や剣道への考え方を持っていると考えられます。
それが分かるからこそ、指導の仕方が分からずに戸惑ってしまうこともあるでしょう。
しかし、やはり人に言われなければ気付けないことも多いですから、遠慮をすることなくきちんと指導するようにしましょう。
その際、押し付けるような物言いだと反発を生みかねないので、「こういうやり方もあるから試してみて」といったある程度相手に任せるようなスタンスが望ましいでしょう。
また、このくらいの年齢だと指導者として稽古を積み始めていることも考えられますから、徐々に人間形成や「人を育てる」ということに関して考えを深める機会を作ってあげることも重要です。
指導者としての心構え
上で確認したことに加え、どのような心構えが必要なのかを確認しましょう。
指導される側の技術・人間性の向上を目指す
当たり前のことですが、指導は自分の思い通りに動いてもらうためにするものではありません。
いかに伝えたいことを分かりやすく伝え、効率的に力を伸ばせるようにするかが大きな課題です。
それぞれに合った指導方法を模索し、技術が少しでも向上するように、さらには人として成長できるように、願い実行していくことが必要です。
自分の実力を出し切り、さらなる高みを目指す
防具を着けているときでもそうでなくても、自分の持てるものを惜しみなく出して指導しましょう。
加えて、指導者であると同時に修行者であるという気持ちを持ち、自分自身の力をさらに伸ばすことも常に意識しましょう。
相手の修錬の度合いによって指導の方法を変化させることは必要ですが、こういった真剣さ・向上への意欲は忘れずにいたいですね。
それは指導される側にもおのずと伝わります。
安全を確保する
体操などの準備、竹刀や防具の点検、稽古メニューの作成など、安全を確保する上で指導者ができることはたくさんあります。
掛り稽古のように体力的にも精神的にも高負荷の稽古は修錬の上で非常に重要ですが、同時に適切にケアや指導をしないとその高い負荷が図らずも怪我・意欲の低下などにつながってしまいます。
広い視野を持ち、心身の安全をきちんと確保しましょう。
解答例
以上を踏まえて「『指導者としての心構え』について述べなさい」への解答例をまとめましょう。
そのため指導を受ける側にもまして謙虚さや向上意欲を持つ必要があり、以下のような心構えを持つことが望ましい。
- 指導される側の年齢や修錬の度合いに応じて指導方法を工夫する:
- 指導される側の技術・人間性の向上を願い、効率的でわかりやすい伝え方をする
- 防具を着けているといないとに関わらず、自分の力を出し切るつもりで臨み、指導者であると同時に修行者であることを忘れずに自己の修養にも努める
- 体操や竹刀・防具の点検などをきちんと行わせ、また高負荷の稽古では特に広い視野を持って声掛けなどを行い、心身の安全の確保に努める
初心者や小学生などに対してはまず剣道を楽しいものだと知ってもらうことから始め、同時に挨拶や道具の扱いなどについても丁寧に教える。
中高生などに対しては個々の人格や個性を尊重し、またそれを適宜伝え、個々の得意を伸ばし苦手を克服するような指導を行う。
それより上の年代に対しては個々の主体性にある程度任せるようにし、人間形成としての剣道に関する考えを深めるような機会を作る。
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
コメント