初段審査では初めての学科審査に挑戦することになります。
技能だけでなく、理論も身に付けてより厚みのある剣道を目指しましょう!
掛け声の種類
剣道では
- 相手と向かい合って攻め合いをするとき
- 打突の瞬間
- 打突の後
に掛け声を伴いますが、これらはそれぞれ違った目的や効用を持ちます。
この記事ではこれらについてそれぞれ解説します。
攻め合いの掛け声
攻め合いの掛け声には
- 自分を奮い立たせる効果
- 相手を威圧する効果
があります。
自分を奮い立たせる効果
他のスポーツにおいて試合が始まる前に円陣を組むなどして大きな掛け声を掛けたり、あるいはジェットコースターに乗って落ちるときに大きな声を出したりということはよくありますね。
大きな声を出すことによって交感神経が刺激され、緊張がほぐれたり気力が充実するという効果があります。
相手への恐怖心を振り払い、「打つぞ」「突くぞ」という攻め気を表すとともに自分の気勢を充実させるために掛け声を掛けるということですね。
相手を威圧する効果
自分の攻め気を前面に出すことによって相手を威圧し、攻め気を挫くことができます。
ただし、相手の攻め気を挫くためには単に大きな声を出すだけでは不十分で、声のトーンや長さ、鋭さなどを変える必要があります。
これについては強い剣士や高段の先生がどのような発声をしているかを研究することも有効です。
打突の瞬間の掛け声
打突の瞬間の掛け声には
- 攻め気を伝える効果
- 打突の威力を増す効果
があります。
攻め気を伝える効果
「メン」「コテ」「ドウ」「ツキ」と、打突部位の名称を正確に発声するように指導されることが一般的ですが、これを実現するためには最初から「この技を決める!」というような攻め気が必要です。
適当に竹刀を振り回してもどこかに当たるかもしれませんがその場合正確に打突部位を発声するのは困難でしょう。
つまり、打突の瞬間に適切に掛け声を掛けることによって相手や(試合であれば)審判に「自分はこの技を決めようという攻め気をもって打突した」ということを表すことができるということです。
打突の威力を増す効果
テニスの試合を観ているとラケットをボールに当てる瞬間に選手が大きな声を出しているのをよく見ますが、瞬間的に大きな力を出したいときに掛け声が果たす役割は大きいようです。
剣道の打突も瞬間的な威力が必要ですが、ただ腕を振るだけでなく掛け声を掛けることによってさらに打突の威力が増し、より充実した打突にすることができます。
打突の後の掛け声
打突の後は抜けるなどして間合を取り次の打突に備えますが、その際、構えをとるまで声を伸ばすのが一般的です。
この掛け声には
- 気(縁)を切らないことの理解の促進効果
- 相手の気力を挫く効果
があります。
気(縁)を切らないことの理解の促進効果
剣道では打突を終えても気を抜くことなく次の打突に備える必要があります。
ただ、特に初心者の内はどうしても打突の瞬間にばかり集中してしまい、その後の「身構え・気構え」まで意識が回らないことがあります。
そこで「掛け声を切らない」という稽古法が活きてきます。
「気を切らない」というのは理解や実践が難しいですが、「声を切らない」というのは実践しやすく、また指導者からしてもできているかどうかを判断することが容易です。
声を切らないことにも集中力がもちろん必要ですし、習熟していくにつれて「声を続けずとも気を切らない」という打ち抜けを稽古することも可能になります。
さらに、声を出し続けるのは体力的な負荷も大きく、なるべくならその時間を短くしたいと思いますね。
すると打ち抜けの送り足や振り返りを速くする必要が出てきて、結果として正しい体捌きや残心の理解を身に付けることができます。
このように打突の後の掛け声には気を切らない効果、さらには残心への理解を深める効果があります。
相手の気力を挫く効果
打突の声を短く切ってしまうと、「捨て身で打ち切った」という印象が薄くなってしまいます。逆に有効打突となるような当たりでなかったとしても堂々と声を伸ばすことで自分の気勢が充実していることを表せ、相手の「心を打つ」ことができます。
自分の気勢が充実した状態で自信をもって打ち込めば当然相手の気勢は大なり小なり削がれますから、打突の後の掛け声にはこのような効果もあります。
解答例
以上を踏まえて「『掛け声』の効用(ききめ)について述べなさい」への解答例をまとめましょう。
打突の際の掛け声には、自分の攻め気を表し、打突の威力を増す効果がある。
打突の後の掛け声には、気を切らないこと、ひいては残心への理解を深め、さらに相手の気力を挫く効果がある。
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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