憧れの手刺防具。いつかは欲しいですね。
そんな手刺防具を選ぶ際に悩むのが、「刺し幅をどうするか」という問題です。
この記事ではそれぞれの刺幅について特徴を解説します。
刺し幅って?
防具には大きく分けて「手刺防具」と「ミシン刺防具」がありますが、これらの違いは防具の布を縫い合わせた部分(主に「布団」といいます)が手縫いによるものかミシン縫いによるものかという点です。
そして、防具の布団は打突の衝撃から身を守るために何層もの材料を縫い合わせて作りますが、この縫い合わせの作業をどれだけの細かさで行うかというのが「刺し幅」です。
手刺防具の刺し幅は尺寸で表され、一分(いちぶ、約3mm)、一分二厘(いちぶにりん(以下同様)、約3.6mm)、一分五厘(約4.5mm)、二分(約6mm)、二分五厘(約7.5mm)、三分(約9mm) がよく見られます。
「細かい刺しは高級品」は正しいのか?
刺し幅が細かければその分作業量が増え工賃が上がるので防具の値段は当然高くなります。
「より手間が掛かっていて見た目のきれいな細かい刺しの防具は高級品」という考え方は一見当然のもののようですが本当にそうでしょうか。
細かい刺しのデメリット
一分や一分二厘といった細かい刺し幅の防具は高級品と位置付けられますが、実はデメリットもあります。
一般的に言われるのは「布団が堅くなる」ということです。
同じ面積に対しての縫い合わせの数が増えることによって布団が"縫い固められる"ことになるからです。
布団が堅いということは、面で言えば顔の形に馴染みにくかったり、打突の衝撃が吸収されづらかったりするということですね。
それに加え、布団の表面の凹凸が小さくなるのでクッション性が落ちるという考え方もあります。
また、「十分な芯材を縫えない」という点もあります。
ミシン刺しと異なり、綿や毛氈といった分厚い材料を"締めながら"刺していくことができるのが手刺の長所ですが、細かい刺しの布団をきれいに作るためにはいくらか芯材を薄くする必要があります。
するとこの「分厚い芯材を縫える」という手刺本来の良さが薄れてしまいます。
装着感や衝撃吸収性に難があるようでは「防具」としての高級品とは必ずしも言えませんね。
それから「細かい刺しは見栄えが良い」というのも一般的な意見ではありますが、これは一人ひとりの好みもあり、「二分や三分などの刺しの方が立体感があって手刺らしい」という考え方もありますから、そういう方にとってはむしろ大きい刺しの防具の方が見栄えが良いということになりますね。
おすすめの刺し幅は?
細かい刺しのデメリットを紹介しましたが、では二分五厘や三分などの大きい刺しの方が良いのでしょうか。
歴史的に見ると、三分刺の防具はミシン刺がまだなかった時代の子供用や、新米職人の修行用に作られることが多かったようです。
ですから「クラシックな雰囲気の防具が欲しい」という方にはおすすめですが、一般的にはもう少し細かい刺しの方がいいでしょう。
まとめ
以上を踏まえると、一分五厘から二分周辺、特に普段の稽古でも使う予定であれば二分周辺の刺しがおすすめということになります(二分周辺というのは一分八厘から二分二厘の間くらいということです)。
このくらいの刺し幅ですと、手刺らしい風合いや高い機能性を維持しつつ、見た目にも美しい防具となるのではないでしょうか。
最近は新しく手刺防具を選ぶ際に二分刺を選ぶ方も多いようですから、時代の流れにも合致していますね。
ただし、これはあくまで「十分な芯材がしっかりと縫い込まれている」ことが前提となります。最初から薄い芯材を使って安価に抑えているような手刺防具では、刺し幅はほとんど見た目にしか影響しません。
そういう意味では、一生モノの手刺防具を探す際には予算にも余裕をもって臨むようにしたいですね。
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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