剣道修行の必需品「竹刀」。様々な銘柄があって「どれを選べばいいの!?」となる方も多いことでしょう。
ここでは竹刀の選び方について一歩踏み込んだ解説をしていますので、お気に入りの一振を既に見つけた方もこれからの方も是非チェックしてみてください。
操作性で選ぶ
まず基本的には竹刀は「自分にとって扱いやすいかどうか」で選びます。
実際に手に取って振ってみることで操作しやすいか否かが分かりますね。
先が重く感じる竹刀
直刀型や柄の細い竹刀は剣先に重量感があり、大きく力強い打突に向いていると言えます。
先が軽く感じる竹刀
胴張型や柄が太い竹刀や先(物打周辺)の細い竹刀は剣先が軽くなるため素早い打突や連続的な打突に向いていると言えます。
ただし、「先細型」などと言われる物打周辺を細く削った竹刀は耐久性の面ではやや劣る可能性があります。
「矯め」のできている竹刀を選ぶ
竹刀の材料は竹ですが、一見真っ直ぐ上に伸びてるように見えて実際には天然の素材ですから様々な方向に曲がっています。
曲がったままでは竹刀のように直線的な製品は作れませんからこれを真っ直ぐにする必要があります。
それには2つの方法があり、1つは真っ直ぐに削ってしまう方法、もう1つが「矯め(ため)る」方法です。
「矯め」という字は「歯の矯正」というように「曲がったものを真っ直ぐにする」という意味で、竹刀作りにおいては竹(の繊維)を熱と力をかけて真っ直ぐにする工程のことを言います。
矯めには多くの手間が掛かるため竹刀の価格は高くなりますが、ただ真っ直ぐに削る方法に比べてどんな利点があるのでしょうか。
矯めずに削っただけの竹
図は竹の繊維の様子を模式的に表したものです。主に節の部分で竹の繊維は曲がっています。
これをそのまま直線的に(赤の点線に沿って)削ると下の図のようになりますが、矢印で表したように繊維の断面が剥き出しになっていることが分かります。
竹は繊維を割く方向には曲がる方向に比べて強くないので、このような竹刀で打突を繰り返すとすぐに繊維が断面からめくれてササクレが発生します。
ササクレは怪我や相手の防具を傷める原因にもなるほか、あまりに頻繁に手入れをする必要があると精神的なストレスにもなり得ます。
きちんと矯めの工程を経た竹刀ですら繰り返し使用すればササクレは発生するわけですが、このように簡単にササクレることが予想される竹刀は適切な道具とは言えないのではないでしょうか。
竹刀の繊維を見てみましょう
図では分かりやすいですが、実際の竹刀では見分けはつくのでしょうか。
次の画像は竹刀の胴節の断面のものです。
上は竹刀職人が手作業で作った竹刀で、繊維が一続きに真っ直ぐ見えます。
それに対し、下の廉価品は繊維がざくざく途切れているのが分かります
ただ、胴節の繊維は胴の張った竹刀ではどうしても途切れるのでその場合はあまり判断基準にはなりません。
そこで次に確認するのは実際に打突に使う物打部の断面です。
職人の手になる竹刀は見事に繊維が真っ直ぐ一続きになっています。
画像ではやや見えにくいものの、やはり下の廉価品は繊維が途切れていることが分かり、ここからササクレが発生することが容易に想像されます。
安全で快適な稽古のためにも、竹刀を選ぶ際にはこのように竹の繊維が真っ直ぐになっているかを確認し、なるべくそのようなものを選ぶようにしたいですね。
まとめ
竹刀は剣道の稽古に不可欠な道具であり、かつて武士が己の刀を大切に扱ったように剣道家の「相棒」と言えるものです。
自分の剣風に合った竹刀を見つけるだけでなく、様々な竹刀を使って剣道の幅を広げることも有意義でしょう。
また竹刀を選ぶ際にあまり意識されることのない「矯め」について解説をしましたが、竹の繊維を無視した機械的な作りの竹刀ではなく、きちんと矯めの工程を経た竹刀を選ぶようにしたいものです。
安全で快適な稽古にもつながりますし、繊維から真っ直ぐな竹刀は稽古に臨む心まで真っすぐに正してくれそうです。
剣道家がそのような竹刀を選ぶようになれば、メーカーなどの作り手も行き過ぎた低価格志向によって手放さざるを得なかったモノづくりへのこだわりを形にすることができるようになっていくのではないでしょうか。
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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