稽古はその意義を認識し、積極的に取り組むことで多くのものを得られます。
実りある稽古とするために理論もしっかり学びましょう!
稽古の意義
稽古の意義とは、言い換えれば「剣道を学ぶ意義」です。
こちらの記事では剣道の魅力について紹介していますが、やはり「人間形成の道である」というところが特徴と言えるでしょう。
競技として考えれば稽古は技能向上をするために不可欠なもので、それは他のスポーツなども同じですが、剣道においてはさらに「心の修行」にも目を向けることが必要です。
稽古はたとえ同じメニューで行ったとしても取り組むごとに様々な変化があり、その中で自分の心情や考え方の変化にも気付くことができます。
単に「打った」「打たれた」というだけでなく「なぜあの技を打てたんだろう」「どのように攻めればいいんだろう」と稽古を重ねるにつれて考えが段々と深まっていくでしょう。
そうした中で自分の剣道への考え方や、ひいては自分自身のあり方に目を向けて考えを深めていけるということがひとつの「稽古の意義」だと言えるでしょう。
稽古の心構え
稽古に臨む際のポイントは以下のようなものです。
- 目標を持って行う
- 素直な心を持つ
- 礼儀作法を大切にする
- 積極的に、真剣に取り組む
- 安全に配慮する
- 振り返りをし、次の稽古に活かす
学科審査においてはこれをそのまま覚えるのもいいですが、以下ではこれらのポイントを稽古の流れに沿ってまとめます。
稽古の前
稽古に向かうときのことをイメージしましょう。
防具や竹刀・木刀を用意し、稽古場に着いたら掃除・着付け・準備体操を行いますね。
まずすることは竹刀のササクレや紐の傷みをチェックし、安全に稽古できるか確認することです。傷んだ竹刀をそのまま使えば相手の防具を傷める原因になるだけでなく、場合によっては目に入るなどして重大な事故を引き起こすことがありえます。
また、紐が切れそうになっていたり甲手の手の内に穴が開いていたりすると、稽古中思わぬタイミングで防具が外れたり指が外に出たりして怪我をする可能性があります。しっかりと確認をしてこのようなアクシデントを未然に防ぎましょう。
また、準備体操を行うことも怪我の予防に役立ちます。
相手の安全・自分の安全に十分気を配ることが重要です。
さらに、これは剣道に限ったことではありませんが、きちんと目標の設定をしてから臨むことが重要です。どんなに指導者が優秀でも、教えてもらう側に向上意欲がなければ稽古の効果はほとんどありません。
目標の設定は「技術的なもの(この技が打てるようになりたい、もっと打ちを強くしたい、など)」と、「精神的なもの(キツくても声を出そう、あの先輩・先生に掛かろう、一本取ろう、など)」の両方を持つといいですね。
稽古の前に黙想(正座)をすることが一般的ですが、その際にその日の目標を思い返すと集中した状態で稽古を始められますね。
稽古中
稽古中は集中して、一本一本の打突や一つひとつの所作を真剣に、丁寧に行いましょう。
稽古の時間は限られています。長い時間稽古することもあるでしょうが、それでも稽古時間や打てる本数には限りがありますね。
一方、打突や所作において手を抜いても、結局普通に疲れます。それなら一つひとつの動きに真剣に全力で取り組んだ方が身になるというものです。
また、この時も目標の設定が重要になってきます。
「今の打ちはイマイチだったから次はもっと強く打とう」
「足さばきをもっと早くしよう」
「あの人の打ちを真似してみよう」
このように「稽古中の細かい目標設定」ができると稽古はより充実したものになります。
さらに、先生や先輩からの指導を受ける機会があった時にはまずは素直に受け止めて実践しましょう。
「道場の先生が言っていたことと違う」とか「そのメニューはキツくていやだな」といったことが頭に浮かぶこともあるかもしれませんが、剣道には「これがただ一つの正解」というものはほとんどありませんから、様々な考え方や稽古法に触れることで経験値が上がり、自分の頭で考える時に大いに役立ちます。
凝り固まった考え方で稽古を続けた人と、色々な方法で稽古を重ねた人では人間としての厚みにも差が出てくるでしょう。剣道は人間形成の道ですからこれは非常に重要なポイントです。
稽古の後
稽古が終わったら挨拶をし、道具の片付けなどを行いますがこの時に重要なのが「次の稽古の目標設定」です。
稽古の前に考えることももちろん重要ですが、稽古が終わった直後はその日の稽古の内容が記憶に新しく、具体的な目標を立てるのに絶好のタイミングです。
先生や先輩からコメントを頂いたら、それと合わせて稽古の反省をし、良かった点も悪かった点も次の稽古に活かせるように目標を立てましょう。
また、稽古中には所作をきちんととっていれば問題は無いですが、稽古が終わった際(もちろん稽古前も)の挨拶や道具の手入れにその人の礼儀作法というものが表れます。
指導してくれた人に対して感謝の気持ちを持ち、それを表に出すようにしましょう。先生も人間ですから「ありがとうございました」と言われれば「よし、次も頑張ろう」という気持ちになります。
道具の手入れも、「道具に感謝の気持ちを持つ」ということにつながります。防具や竹刀がなければ稽古することができませんから、人と同じように大切に扱いましょう。
稽古?練習?
ところで剣道をするとき、「練習」という言い方をすることはあまりないですね。
武道や伝統芸能を習うときには「稽古」を使うのが一般的かと思いますが、この言葉についても考えてみましょう。
「稽」の字には"かんがえる"という意味があるので、字の意味としては「古きをかんがえる」ということになりますね。解釈の仕方は様々あるでしょうが、「先人が積み上げてきた歴史や教えを学んでいく」ことが稽古なのではないでしょうか。
体を動かして鍛えることも重要ですが、学ぶ姿勢をもって精神的にも成長することが肝要です。「守破離」や「温故知新」という言葉があるように先人の教えに学んでこそ新しいものを生み出せるという考え方もありますね。
また、「練習」という言葉には「本番」という言葉がセットで付くようなイメージがありますが、剣道を習うことを「練習」と言うとして、「本番」は何でしょうか。試合でしょうか?
剣道における試合は、"試し合う"と言われるように稽古の成果を試し、その反省をまた稽古に還元して工夫・研究につなげ、修行を次のステージに進めるための手段です。
そういう意味では普段の稽古こそが「本番」であり、やっぱり「練習」という言い方はなじまないのかもしれませんね。
解答例
以上を踏まえて、「稽古の意義」や「稽古の心構え」に関する問題への解答例をまとめましょう。
剣道の稽古はその技能を向上させるために不可欠であるが、そればかりでなく心の修行という面に目を向けることも重要である。
相手や自分自身に向き合うことによって、稽古を重ねる中で自らの剣道に関する考えが深まり、ひいては自分自身のあり方を深く考えることにつながる。
こうしたことによって体を鍛えるだけでなく精神的に成熟していけることが稽古の意義であり、言い換えれば剣道を学ぶ意義である。
<稽古の心構え>
稽古においては、体を鍛え技を磨くだけでなく、先人の教えを学ぶ姿勢をもって精神的にも成長することが重要である。
稽古の前には目標を立て、技術的にも精神的にも充実したものにする。
稽古中は素直な心で指導を受け、一つひとつの打突や所作を大切に、旺盛な気力をもって積極的に行う。その際、言われたことだけをするのではなく自ら考え、工夫して取り組む。
稽古後は良かった点、悪かった点の反省をし、次の稽古につなげる。
また、全てを通して安全の確保に気を付け、指導者や仲間や道具に至るまで感謝の気持ちを持ち、礼儀正しく振舞う。
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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