剣道試合・審判規則における「禁止行為」とは

剣道を考える

初段審査では初めての学科審査に挑戦することになります。
技能だけでなく、理論も身に付けてより厚みのある剣道を目指しましょう!

禁止行為

剣道に限ったことではありませんが、試合においては公平性や安全性を担保するために規則によって禁止行為が定められています。

知らないで禁止行為をやってしまうと試合において不利になってしまいますし、普段の稽古でのそのような行為を避けるためにもしっかりと確認しましょう。

学科審査においては「〇項目以上書きなさい」というような出題をされることが多いようですが、全てに目を通した上で選ぶようにしてください。

禁止薬物を使用する

世界ドーピング防止機構(WADA)の最新の禁止表に掲載されている薬物を使用もしくは所持すること、または禁止方法を実施することが禁止されています。

これは試合の公平性はもちろん、自分の健康を守るためにも絶対に守らなければなりません。

この規則を破ってしまうともちろん試合は負けとなりますが、それどころか薬物によっては法律による処罰の対象となり得ます。

自分自身や大切な人のために、禁止薬物には関わらないようにしましょう。

審判員および相手に対して非礼な言動をする

試合ではうまくいかないことや予想外の判定をされることがあり、そういう時は心が乱れることがありますね。

しかし、そこで感情をむき出しにして審判員や相手に対して失礼な態度をとってしまうようでは剣道家の名がすたるというものです。
自分がそうであるように、相手も審判員も真剣にその試合に向き合っているのです。

尊敬や感謝の気持ちを大切に、試合に臨むようにしましょう。

この規則を破るとその試合は2本負けとなり、その大会などにおける既得権(反則と判定される以前の有効打突など)が無効になり、さらに退場を命じられます。

不正用具を使用する

剣道は防具や竹刀といった道具を用いた対人競技ですから、安全性に最大限配慮する必要があります。
これは特にその安全性を確保するための規則です。

  • 規定を満たさない竹刀
  • 十分に体を保護できない防具や道着
  • 必要以上(面・甲手・胴・垂以外)の装備

を使用してはいけません

この規則も破ると2本負けとなりますが、既得権が無効になるのはその試合のみで、前の試合まではさかのぼりません。

相手に足を掛ける/足を払う

かなり昔の剣道では足掛けや足払いが認められていて、現在でも警察官のみの大会などでは認められているようです。

真剣勝負においては全身を武器として戦わなければなりませんから、こうした行為が「技」と認められるのはごく当然のことです。

しかしながら、足による崩しを認めると怪我などのリスクが大幅に増えてしまい、また、「剣の理法」を修錬するのが現代剣道ですが、足技はそこからはやや遠ざかってしまうとも考えられます。

そのような理由から、これらの行為は禁止されています。

知識として「こういう崩しもあるんだ」と知っておくことは重要ですが、実際に行うことはやめましょう。

試合中に場外に出る

おそらく剣道の試合で最もよく見られる反則です。かつては打突の勢いで場外に出ることは「余勢場外」などと言って反則にならなかったようですが、現在はそのような場合も反則となります。

相手を不当に場外に出す

場外に出ると反則を取られますから、試合場の境界線付近では相手を場外に出すことを意識する人は多いようです。

しかし、そこで意外と知られていないのがこの「相手を不当に場外に出す」という反則の存在です。

認識としては「相手を場外に出そうとして実際に出したら反則」と考えるといいでしょう。

「打突を伴う体当たり」や「鍔ぜり合いからの打突のための崩し」などによって相手が場外に出た場合は当然相手の反則ですが、相手の反則を期待して場外に出すと自分に反則がつくということです。

もし手段によらず場外に出たら反則というルールであれば、押し出し要員だけで構成された団体や反則だけで勝ち上がる選手が出てくる可能性があります。

もちろんそんなことはないでしょうが、もしそのような事態が起きたときに止める手段がないわけです。

そのような"剣道とかけ離れた競技"になってしまうことを未然に防ぐ目的に加え、「剣の理法の修錬」という観点からも適切でないということで反則事項として定められているのだと考えられます。

また、反則というのはあくまで自分の至らなさに対してつくマイナスのポイントであり、相手が反則をしたとしてもそれは自分のプラスのポイントではないと考えれば、このような反則行為は起こりづらいでしょう。

反則のあるなしは当然試合の上では重要な要素ですが、相手の反則を頼りにするような消極的な試合ではなく、有効打突を求める積極的な試合をしたいですよね。

もし相手を場外に出したい状況である場合は見苦しくないような程度にし、かつ出した後に直ちに打突するなど「攻めの一環として崩した結果相手が場外に出た」という理合になるようにしましょう。

自己の竹刀を落とす

真剣勝負であれば刀を取り落としてしまったら組手のようになるでしょうが、現代剣道においてはあくまで竹刀による有効打突を求めますから、そのための竹刀を落としてしまえば反則となります。

不当な中止要請をする

試合者が試合の中断(タイム)を要求できるのは竹刀や防具や身体に不具合が生じたときなど、止めなければ安全に支障をきたすという場合がほとんどです。

「立ち位置が不利なので中心に戻りたい」
「疲れたので呼吸を整えたい」
「相手に先を掛けられてしまったので仕切り直したい」

というような理由で試合を中断することは公平性に欠けるため、このような理由での要請は反則となります。

試合の中断を要請した場合は主審から理由を聞かれますので、誤解を与えないようはっきりと理由を伝えましょう。

相手に手を掛ける/抱きこむ

これも真剣勝負であればあり得る行為ですが、現代剣道においては公平性の観点から反則となります。

ただし、転倒しかけた際など、体のバランスを取るためにとっさに行った場合には反則になることは少ないようです。

相手の竹刀を握る/自分の竹刀の刃部を握る

相手の竹刀を握っていいのであればもう片方の手で好き放題に打突することができますが、明らかに公平性に欠けますね。

また、刀であれば刃部を握れば当然握った手が切れますから、自分の竹刀であっても試合中に刃部を握ることはしてはいけません。

相手の竹刀を抱える

これはあまりないケースですが、「相手の竹刀操作を自分の腕で妨害する」という解釈が一般的でしょう。

少なくとも「自分は打突できるが相手は物理的にできない」という状態を故意に作ると公平性の観点から反則となります。

相手の肩に故意に竹刀を掛ける

これも公平性の観点から反則と定められていますが、刀であれば刃が体に当たっているという状態はあり得ないので理合の面からも不適切な行為と言えます。

倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せなどになる

相手が転倒したとき、直ちに出した打突は有効打突となり得ますが、それに対応しないことは「試合を放棄する」ことと同じです。

打突部位を隠して「逃げる」のではなく、正面から相手に向かっていく姿勢を持ちましょう。

故意に時間の空費をする

「自分が引き分ければチームは勝ちだ」
「一本取ったからこのまま時間切れを待とう」

試合においてはごく当たり前の心理ですが、剣道の「"試し合い"である」という考え方からすれば貴重な試合時間を空費するのは非常にもったいないことです。

相手も真剣に自分と勝負しようと向かってきているわけですから、それをかわして勝負から逃げることはしてはいけません。

不当な鍔ぜり合いおよび打突をする

拳同士が競り合う「拳ぜり合い」や、相手の竹刀の刃部に拳が当たる鍔ぜり合いを継続すると反則となります。

また、大会によってはお互いの竹刀が左に傾いた状態で鍔ぜり合いをする「裏交差」も反則となることがあります。

特に、相手が正しい鍔ぜり合いをしようとしているのにこのような行為をした場合に反則となるケースが多いようです。

同様に不当な鍔ぜり合いの状態から打突することも公平性を欠くので反則となります。

まとめ

剣道試合・審判規則による禁止行為について解説をしましたが、いずれも安全性・公平性・理合といった観点から定められていることが分かるかと思います。

こうした基準に照らして自分の剣道を振り返り、規則に定められていないことについても判断できるようにしたいですね。

この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。

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