剣道の稽古においては体力や技の鍛錬だけでなく、理論を学ぶことも大切です。
技能だけでなく、理論も身に付けてより厚みのある剣道を目指しましょう!
互格稽古とは
剣道をしていると「先生と教え子(弟子)」「先輩と後輩」など位(くらい)の違いを意識することが多いですが、多くの場合より高位の方が下位者の力を向上させるために指導者の役割を担います。
互格稽古とはその名の通り両者が対等な立場で行う(あるいは同等の実力の剣士同士で行う)稽古で、言わば審判のいない試合稽古のようなものです。
「地稽古」が似ていますが、こちらは必ずしも両者が対等に行うわけではなく、目的に応じて高位者が稽古の方法を工夫するという性格を持っています。
双方が位の違いを意識せずに向き合うという点で互格稽古は最も「真剣勝負」に近い稽古と言え、実戦的な技術の習得はもちろん、自分の実力を確認し他の稽古に還元することができる貴重な機会です。
互格稽古で注意すること
普段から礼節を尊び、特に自分より高位の人に対しての振る舞いに気を付けている剣道家にとって「対等な立場で稽古をする」というのは言葉ほど簡単でないかもしれません。
以下のような点を意識し、互格稽古の効果を高められるようにしましょう。
※四・五段の審査において「指導上の留意点」を解答する場合も同様のポイントをまとめることができます。
相手を恐れたり侮ったりせず、真剣に立ち合う
「互格稽古」ですから、まずは気力の面において対等に向き合わなければなりません。
相手が先生や先輩であっても恐れたり気を遣ったりせず、逆に相手が後輩などであっても油断したり手加減をしたりせず、自分の持てる力をしっかりとぶつけることが重要です。
刀の時代の"負ければ命を落とす"ことになる真剣勝負においては、相手の位がどうであれ全力で戦うことは想像に難くないでしょう。
そのような真剣な気持ちで臨むことが互格稽古には必要だと言えます。
基本を崩さない
真剣になればなるほど「打ちたい」「打たれたくない」といった気持ちが強くなり、基本の動作を崩してしまいがちです。
しかし、剣道は人間形成の道であり、「いかに相手に竹刀を当てるか」というスポーツではありません。
せっかく修錬を積んで身に付けた基本を崩してまで打突しようとするのは本末転倒ですから、他の稽古で身に付けたものを活かす稽古にしたいですね。
初太刀を大切にする
不用意な打ちはかえって隙になります。
相手も打突の機会を探っていますから、打つ直前の出ばなや応じ技を打たれてしまう可能性が高まるためです。
一本一本をしっかりと練って、打ち切るようにすることが重要です。
また、その中でも特に大切なのが最初の一本「初太刀」です。
互いに相手の手の内を知らない場合、初太刀は一気に相手を攻め崩すきっかけ、あるいは相手の剣風を見抜く手がかりとなります。
そうでなくとも、初太刀をどのように出すかでいわゆる「流れ」のようなものができますから、有利に立ち合うためにはここに重きを置くことが必要と言えます。
多くの人と稽古する
体格や剣風の違いなどによって「この人はやりやすい」「この人はやりづらい」ということを感じることがありますが、特に互格稽古のようにお互いに技を出し合う稽古においては技がうまく決まらないなどの「やりづらい人」を含めてなるべく多くの人と剣を交えることが大切です。
同じ相手とばかり稽古をしていると段々と手の内が読めてくるようになり、相手の癖などから動きを予想することができるようになってきます。
こうなると「攻めによって相手を崩す」という部分がおろそかになってしまい、剣道の本質的な成長が遅くなってしまうことが考えられます。
こうしたことから、相手を選ばずなるべく多くの人(特に癖や剣風が違う人)と稽古をする意識を持つことが必要だと言えます。
相手をよく観察し、工夫を怠らない
「打ちたい」「打たれたくない」という気持ちは当然ながら相手も持っています。
自分の好きなタイミングで一辺倒な打突をしていたのでは相手がいる意味がありませんから、相手の癖や心の動きを読み取り、それに応じて多彩な攻め・崩し・打突を試みることで実戦的な力が身に付きます。
一つのやり方にこだわらず、常に工夫し柔軟に変化させる姿勢をもちましょう。
まとめ
互格稽古は実戦的な力を身に付けるのに大変適した稽古法ですが、紹介したような注意点を心に留めておくことでその効果をより大きくすることができます。
学科審査においては各項目の見出しを記述する程度の場合もありますが、この「稽古の効果をより大きくするために注意する」という視点をもって理解をしておくと普段の稽古でも思い出すことができます。
意識する必要のあることが多いのでやや難しい稽古法でもありますが、ぜひこうした稽古にも取り組んでみましょう!
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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