剣道の稽古においては体力や技の鍛錬だけでなく、理論を学ぶことも大切です。
四段以降は「指導者」の位であると言われますから、自分の中で理解するだけでなくそれを教えることができるように技能や理論を身に付け、より厚みのある剣道を目指しましょう!
引き立て稽古
引き立て稽古はその名の通り指導的な立場の元立ちが下位者の技能を伸ばすように引き立てる稽古法です。
打突の機会を与えることによって下位者の実戦的な打突技術や打突の機会を見出す"勘"を磨くことを目的とし、ある程度の技能を持っていながらもあと一つ実力を伸ばしたい人や、スランプに入った人に対してこのような稽古法が考えられます。
「今から引き立て稽古をやります」と言ってやるものというより地稽古の中で下位者の修錬の度合いなどによって元立ちがこのような立ち回りを選ぶという性格の稽古法であるようです。
地稽古における元立ちの立ち回りは他に「互格稽古」があります。
元立ちの留意点
合気で攻め合い、瞬間的に打突の機会を与える
まずは気を抜かずに構え合い、下位者のどんな動きにも即座に対応できる心持ちで攻め合います。
そして下位者の気力が充実し姿勢が整ったところで打突の好機を与えます。
このとき、与えた機会に対して即座に・正確に打突ができているかを確認し、不十分な場合は指導をします。
多彩な技を引き出す
下位者の伸ばしたい技などによって変化しますが、持っている技をまんべんなく出して総合的な技能向上につなげられるよう、あらゆる部位の打突の機会を示します。
このときも、示したのと異なる部位を打突した場合などは指摘し、「この場合はこの打突部位の機会なんだ」といった気付きが与えられるようにしましょう。
緊張感を保つ
引き立て稽古の中で下位者が「どうせ打たせてくれる」というように感じると攻めが弱くなったり稽古の緊張感が薄れたりします。
これでは実戦的に打突の機会をとらえる稽古ができませんから、元立ちは常に自分も打って出るつもりで受け、下位者に隙のあるときは実際に打突するなどします。
真剣な攻め合いの中で打突することができたという感覚が剣道の上達につながるというのは当然のようで忘れてはいけないところです。
解答例
以上を踏まえて「『引き立て稽古』について説明し、『元立ちが留意すべきこと』を述べなさい」への解答例をまとめましょう。
元立ちの留意点は以下のようなものである。
- 合気で攻め合い、下位者の気力が充実したところで瞬間的に打突の機会を与える
- 持っている技をまんべんなく出して総合的な技能向上につなげられるよう、あらゆる部位の打突の機会を示す
- 緊張感のある真剣な攻め合いをし、下位者に隙のあるときは実際に打って出るなどする
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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